
「銀行に預けていても増えない……でも、株や投資信託は怖い」
そう感じている方にとって、銀行の定期預金と個人向け国債は、現実的な2大選択肢です。どちらも「元本割れリスクが低い」という共通点がある一方で、インフレが続く今の時代には、その選び方が将来の資産に大きな差をもたらします。
この記事では、独立系ファイナンシャルプランナーの筆者が、制度の仕組みや比較だけでなく、「インフレ時代にどちらを選ぶべきか」という点について本音で解説します。
※本記事には、筆者の個人的見解が含まれています。ご了承ください。
- 個人向け国債とは?仕組みと種類を整理する
- 銀行の定期預金とは?使い勝手と金利の現実
- インフレ時代に「定期預金 vs 個人向け国債」徹底比較
- FPとしての本音|インフレ時代、私はこう考える
- まとめ:インフレ時代の「安全資産」との正しい付き合い方
個人向け国債とは?仕組みと種類を整理する
国が発行する、個人向けの債券
個人向け国債は、国(財務省)が資金を調達するために個人向けに発行する債券です。元本と利息の支払いは国が保証しており、日本国内で購入できる金融商品の中でも、信用リスクという点では最高水準の安全性を持ちます。

<リンク>個人向け国債窓口トップページ : 財務省
銀行や証券会社で購入でき、最低1万円から、手数料なしで始められます。毎月募集されており、購入のハードルは決して高くありません。
3つの種類と金利の特徴
個人向け国債には以下の3種類があります。変動10年、固定5年、固定3年です。

| 種類 | 金利タイプ | 期間 | 2026年6月募集の金利 (税引前) |
|---|---|---|---|
| 変動10年 | 変動(半年ごとに見直し) | 10年 | 1.74% |
| 固定5年 | 固定(満期まで変わらない) | 5年 | 1.86% |
| 固定3年 | 固定(満期まで変わらない) | 3年 | 1.51% |
変動10年の大きな特徴は、市場金利の動きに連動して半年ごとに利率が見直される点です。金利が上がれば受け取る利息も増える仕組みになっており、後述する「インフレへの強さ」に直接つながります。
固定型(3年・5年)は、購入時の金利が満期まで変わらないため、将来の受取額を事前に計算できるメリットがあります。
途中換金のルールを知っておこう
個人向け国債には購入後1年間は換金不可というルールがあります。1年経過後は1万円単位で中途換金できますが、その際に「直前2回分の利子相当額×0.79685」が差し引かれます(中途換金調整額)。
急ぎで現金が必要になる可能性があるお金には向かない点は、購入前に必ず理解しておきましょう。
1年以上は使う予定のない資金での購入を推奨します。
銀行の定期預金とは?使い勝手と金利の現実
一定期間、預け入れるだけのシンプルな商品
定期預金は、銀行に一定期間・一定金額を預けることで、普通預金より高い金利を受け取れる商品です。仕組みはシンプルで、多くの方が馴染みを持っています。
口座さえあれば手続きは簡単で、自動積立定期や給与天引きにも対応しているケースが多いため、「貯める習慣をつくる仕組み」としても有効に機能します。
預金保険で1000万円まで保護される
万が一、銀行が経営破綻した場合でも、預金保険制度によって1金融機関あたり元本1000万円とその利息まで保護されます。国債とは異なる担保ですが、日常的に使う金融機関においては十分な安全網といえます。
2026年の定期預金金利の実態
金利上昇を受けて、ネット銀行では定期預金金利も上昇傾向にあります。
2026年6月時点の主要ネット銀行の1年定期預金金利は以下のとおりです。
<参考>
- SBJ銀行(ミリオくん・1年):1.25%
- 大和ネクスト銀行(1年):1.20%
- オリックス銀行(1年・新規):1.40%
- SBI新生銀行(スタートアップ・新規):1.30%
メガバンクの定期預金は依然として0.3~0.4%台が中心であり、ネット銀行と大きな差があります。また、1年以上の長期定期になるほど、現状では金利が必ずしも高くないケースもあります。
インフレ時代に「定期預金 vs 個人向け国債」徹底比較
以下の表で2つを比較します。
| 比較項目 | 個人向け国債(変動10年中心) | 銀行定期預金 |
|---|---|---|
| 元本保証の仕組み | 国が元本・利息の支払いを保証 | 預金保険で1000万円+利息まで保護 |
| 金利タイプ | 変動(半年ごとに実勢金利に連動) | 固定(預入時の金利でロック) |
| 2026年6月の 金利 |
変動10年:1.74% 固定5年:1.86% 固定3年:1.51% |
ネット銀行1年:1.0〜1.3%程度 |
| インフレへの強さ | 変動なら相対的に強い (金利上昇に追随) |
弱い(金利固定のため) |
| 流動性 | 1年間は解約不可。 以降は中途換金可 |
途中解約可 |
| 最低購入金額 | 1万円から | 銀行・商品により異なる(数百円〜) |
| 複利効果 | 半年ごとに利息受取(単利。再投資は自分で行う) | 満期自動継続などで複利運用しやすい |
| インフレ率(2026年4月) | 消費者物価指数 前年比 +1.4%(総務省) | 同左 |
2026年4月の消費者物価指数は前年同月比+1.4%(総務省統計局)。
個人向け国債変動10年の1.74%は、税引き後(約1.39%)で実質的にインフレ率と拮抗する水準。定期預金(1年:1.0〜1.3%)は、税引き後でインフレ率を下回るケースが多い状況です。
<参考>2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)4月分(2026年5月22日公表)
FPとしての本音|インフレ時代、私はこう考える

余裕資金なら「本来は株式・投信ベース」が正直なところ
正直に言えば、老後や将来に向けた余裕資金の運用という文脈では、株式を含む投資信託(インデックスファンドなど)を活用する方が、長期的なインフレへの対抗力は圧倒的に高いと考えています。
2%前後のインフレが継続する環境では、国債も定期預金も「元本の名目額は守られても、実質的な購買力は少しずつ削られる」のが現実です。
しかし、「株や投資信託は価格が下がることがあって怖い」という感覚は、多くの方が持つ正直な気持ちです。そういった方にとって、現実的な選択肢がこの2つになります。
インフレ時代に定期預金で長期間固定することのリスク
金利が固定される定期預金を、長期で大きな額に使うことは、FPとして懸念。
インフレがさらに進んだり、日銀がさらなる利上げをした場合、「今の金利でロックしてしまった定期預金」は、後から振り返ったときに相対的に損をしていることになります。

例えば、2026年時点で「1年定期・1.3%」に1000万円を預けたとします。翌年インフレが2%、定期継続時の金利が2%に上昇していたとしても、今年1年間の運用はあくまで1.3%です。元本は守られますが、実質的な購買力は目減りしています。
一方、個人向け国債の変動10年は半年ごとに金利が見直されるため、インフレや市場金利の上昇に自動的に追随します。元本が守られながら、利率も上がっていく仕組みは、今の時代に非常に合理的といえます。
それでも定期預金が「向いている」ケースは存在する
ただし、「だから定期預金はいらない」とも言い切れません。定期預金が役立つ場面は確かにあります。
1年以内に使う予定がある資金
旅行、車の購入、近いリフォームなど、使う時期が近い資金は、1年未満の解約ができない国債より、いつでも解約できる定期預金の方がシンプルです。
「貯める仕組み」をつくりたい人
給与天引きや自動積立の設定ができる定期預金は、「気づいたら使ってしまう」という方の貯蓄ツールとして今も有効です。この点において国債は代替にはなりません。
今後、金利が下がり始めた局面
もし今後、金利が下落に転じる局面が来た場合は話が変わります。「今の比較的高い金利を長く固定したい」という場面では、定期預金や個人向け国債(固定5年)が有利になります。変動10年は金利が下がれば利率も下落するため、この点は頭に置いておく必要があります。
私なりの結論:「時間軸と資金の性格」で使い分ける三層構造
まとめると、私の考えはこうです。
| 資金の性格 | 向いている選択肢 |
|---|---|
| 1年以内に使う可能性が高いお金 (生活防衛資金含む) |
定期預金(短期)・普通預金 |
| 中長期・当面使わない守りのお金 (余裕資金) |
個人向け国債・特に変動10年 |
| インフレを超える成長を狙うお金 (余裕資金・長期) |
投資信託などのリスク資産 |
インフレ・金利上昇の継続が前提であれば、中長期の余裕資金の置き場所としては、定期預金より個人向け国債(変動10年)の方が合理的だと、私は考えています。

「元本保証で守る安全ゾーン」と「成長を狙うゾーン」を意識的に分けたうえで、後者にNISAや投資信託を活用する三層構造が、インフレ時代の資産形成では最も現実的な設計です。
まとめ:インフレ時代の「安全資産」との正しい付き合い方
- 個人向け国債(変動10年)は、金利上昇・インフレ局面では定期預金より合理的な選択肢になりやすい
- 定期預金は「流動性」「積立の仕組み化」「金利下落局面でのロック」という場面で有効
- 余裕資金でインフレを超えるリターンを目指すなら、投資信託(株式)を無視することはできない
- どれかひとつではなく、資金の性格と時間軸で使い分ける三層構造が実務的
元本保証の安全資産に関心を持つことは資産形成の第一歩です。「自分のお金の置き場所を見直したい」と感じた方は、ぜひFPへの個別相談もご検討ください。
本記事の主な参考文献・出典
- 財務省「個人向け国債」公式サイト
- 総務省統計局 消費者物価指数
※制度や数字は執筆時点の公表情報に基づいており、将来変更される可能性があります。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・投資を勧めるものではありません。投資は自己判断・自己責任でお願いいたします。
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