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公務員OBが退職金で後悔する3つのパターン【元公務員FPが解説】

退職金が振り込まれた日の「落とし穴」

定年退職の日、口座に大きな金額が振り込まれた瞬間、「やっと手に入れた」という安堵と「これをどうするか」という不安が同時に押し寄せる、という声をよく聞きます。
公務員には、公的年金・退職手当・年金払い退職給付という三つのセーフティネットがありますが、その安心感ゆえに、かえって資産を守る意識が鈍くなりがちです。

退職直後の60代は、人生で最もまとまったお金を持っている時期であり、同時に金融機関からのアプローチが最も集中する時期でもあります。

筆者は地方公務員を17年間務めたのち、独立系ファイナンシャルプランナーになりました。今回は、退職金で後悔する最もよくある3つのNGをお伝えします。

この記事を読む前に——公務員OBの退職金の"リアル"

公務員の退職金は多い。でも「安泰」ではない

地方公務員がフルキャリア(勤続35年前後)で定年退職した場合の退職手当は、自治体や職種にもよりますが、モデルケースでは2,000万円前後になることが多いです。

退職手当(一時金)に加えて、65歳以降は「厚生年金」と「年金払い退職給付(公務員独自の上乗せ年金)」が毎月入ってきます。一見、手厚い体制です。

しかし、そこには見えにくい2つのリスクが潜んでいます。

1. 運用経験のなさ:公務員は現役時代、投資をする必要性を感じにくい環境にいます。退職してから初めて「大金の運用」に直面するのです。

2. 金融機関のアプローチ:退職金の大型入金を銀行はすぐに把握します。「おめでとうございます」の電話が来るころには、すでに勧誘リストに入っています。

この2つが重なるからこそ、公務員OBには特有の"やってはいけないパターン"が生じます。

過度に心配する必要はありません。ひとつずつ確認していきましょう。


NG①:銀行・証券会社の窓口に「相談」してしまう

退職金が振り込まれた翌日に銀行から電話が来たら…

「お客様、このたびはご退職おめでとうございます。ご資産の運用について、ぜひご相談させてください」。

このような電話が、退職金が振り込まれてまもなく来ることがあります。長年の取引先への信頼感から「ちょっと話を聞いてみようか」と足を運ぶのは自然な心理です。しかしここに最初の落とし穴があります

銀行や証券会社の担当者は、「自社の商品を販売する」という役割を背負っており、必ずしもお客様の長期的な資産形成だけを軸に提案しているとは限りません

これはビジネスとして当然のことですが、「相談に来た」つもりが「購入の場」になっていることに気づきにくいのです。

窓口で勧められやすいNG商品の構造

ファンドラップ(資産一任サービス)

ファンドラップとは、資産の運用をプロにすべて任せるサービスです。2025年9月時点で残高約24兆円を超えるほど拡大しており、退職金の受け取りタイミングで勧誘されるケースも多いです。

問題はコストです。投資信託の信託報酬に加え、「ファンドラップ手数料」と「投資顧問料」が上乗せされ、合計で年1.5〜3%程度の手数料がかかることがあります。仮に2,000万円を年2.5%の手数料で10年保有した場合、手数料だけで500万円超が消えていく計算です。

・「退職金限定・高金利定期預金」とのセットプラン

「退職金を預けると年率7〜10%の特別定期預金が利用できます」。魅力的に見えますが、この高金利が適用されるのは「最初の3か月だけ」です。

しかも、セット購入が条件の投資信託には3〜4%程度の販売手数料がかかることも多く、3か月の利息よりも手数料の方が高くなるケースが実際に起きています。

・外貨建て保険・毎月分配型投資信託

外貨建て保険は為替リスク・解約ペナルティ・手数料の三重苦があり、高齢期に加入すると元本割れリスクが高まります。

毎月分配型投資信託は、受け取る「分配金」が実は運用益ではなく元本から取り崩されている"タコ足配当"になっていることもあります。

 

金融庁も問題視している現実

金融庁は、一部の金融機関について「顧客の安定的な資産形成につながらない販売が行われている」といった趣旨の指摘を行っています。

これは公式文書での指摘です。「相談しているつもり」が「高コスト商品を買わされているだけ」という状況が、実際に多く発生しているからこそ、規制当局が動いているのです。

元公務員FPからの一言
「銀行・証券会社の担当者を悪人だと言いたいのではありません。ただ、彼らは「助言をしてくれる存在」であると同時に、「販売ノルマを持つ営業担当」でもあります。自分たちが儲かる商品を勧めるのはビジネスとして当然のこと。だからこそ、売りたい商品のない独立系FPへの事前相談が、退職金を守る最初の一手になります。」


NG②:退職金を全額、普通預金に放置してしまう

「全額現金」は"攻めない"のではなく、"インフレに攻められる"選択

「銀行窓口で勧められるままに高コスト商品を買ってしまう」ことを恐れるあまり、逆の極端に走る方も少なくありません。「もう何もしない、全部普通預金に置いておく」というパターンです。

気持ちは理解できます。大切な退職金を減らしたくない。誰かに騙されたくない。その心理は自然です。

しかし、「全額を現預金に置く」という選択は、じつは「インフレに静かに攻められ続ける」という選択でもあります。

インフレが退職金を目減りさせる現実

現在、日本はデフレからインフレへと転換しつつあります。物価が年率1〜2%上昇し続ける環境では、現金の購買力は毎年少しずつ低下します。

2,000万円を普通預金に置いたまま20年経過した場合(年率2%のインフレ想定)、「数字の上では2,000万円のまま」でも「実質的な価値は約1,340万円相当」まで目減りします。

公務員OBの方が「全部現金で安全」と感じるのは、現役時代に投資の必要性を感じずに済んでいたからこそです。しかしその感覚は、退職後の20〜30年という時間軸では通用しなくなります。

インフレリスクとは、"お金を减らす敵"ではなく"お金の価値をゆっくり溶かす時間"です。

「必要なリスク」という考え方

ここで大切なのが「必要なリスク」という視点です。

すべての老後資金を現預金で持ち続けることは、「リスクゼロ」ではなく、「インフレという一方向のリスクに全面的にさらされている状態」と言えます。

まず「守りの起点」として使いやすいのが「個人向け国債(変動10年型)」です。

www.mof.go.jp

・元本は国が保証(国債のため、事実上の元本保証)
・金利は半年ごとに見直される変動型
・購入から1年後は、いつでも中途換金可能
・最低1万円から購入できる

全額を株式投資に回す必要はありません。「まず個人向け国債で守りを固めながら、一部を低コストのインデックスファンドで育てる」というバランスが、退職後の運用の基本形です。

元公務員FPからの一言
「まず生活費の2年分を普通預金に残し、残りを“何のための資金か”で仕分けしてみてください。それだけで、全額放置よりも次の一手が見えやすくなります。」


NG③:老後資金の総額を把握しないまま大きく動かす

「いくら使っていいか」を知らないまま、気づけば底をついていた

退職金が入ると、金銭感覚が麻痺することがあります。

・「孫にプレゼントをたくさんしてあげたい」
・「ずっと行きたかった旅行に行こう」
・「念願のキッチンリフォームをしよう」

どれも素晴らしいことです。しかし、計画なく気づけば数百万円が消えていた、というケースは決して珍しくありません。

「年金があるから何とかなる」という感覚は、公務員OBに特有の安心感です。しかし年金だけで生活費のすべてをまかなえるケースは、そう多くありません。

まず計算すべき「使っていい金額の上限」

退職金を動かす前に、次の計算を必ずやっておくことをおすすめします。

ステップ1:月々の不足額を出す

月々の生活費(夫婦合計)— 毎月の年金収入(厚生年金+年金払い退職給付)= 月々の不足額

ステップ2:老後の総不足額を出す

月々の不足額 × 12か月 × 想定年数(例:25年)= 最低限必要な老後資金

この数字を先に出すことで、「退職金のうち、絶対に減らしてはいけない金額」が明確になります。そして「残り=動かしていい余裕資金」が分かります。

ステップ3:退職金を3つに仕分けする

退職金を3つの口座(役割)に分けてから運用を始めることが、失敗を防ぐ最も基本的な方法です。

①使う口座
生活防衛資金(緊急用)+近い将来の出費
生活費×24か月分+直近5年の大型出費予算 

②守る口座
元本を守りながらインフレに対応
個人向け国債・短期債券ファンドなど

③育てる口座
長期的な資産の維持・成長
低コストインデックスファンド・バランス型ファンド

①②を確保してからはじめて、③に回す金額が決まります。①②が確保できていない状態で③に手を出すのが、最も危険なパターンです。

元公務員FPからの一言
「退職金は"今手元にあるいちばん大きなお金"ではなく、"これからの生活を支える最後の大きな資本"です。使い方を決める前に、まず1枚の紙に"月々いくら入ってきて、いくら出ていくか"を書いてみてください。それだけで、かなり頭が整理されます。」

 

では、どう動けばいいのか——「安全運用と必要なリスク」の考え方

3つのNGを整理すると、共通するキーワードが浮かび上がります。

「急がない・分散する・自分の全体像を把握してから動く」

退職金の運用は、急いで始めることが最大のリスクです。退職直後の1〜3か月は"様子見期間"として、大きな意思決定をしないことが鉄則です。

その上で、次の「3ゾーン」を意識した配分を検討してみてください。

・守るゾーン

生活防衛資金・緊急用
普通預金・MRF・退職金定期預金(純粋な預金プランのみ) 

・安全に育てるゾーン
「個人向け国債(変動10年)・国内債券ファンド → などの安全資産」

・リスクを取って育てるゾーン
「新NISA(低コストインデックスファンド)・バランス型ファンド → などの長期分散投資」

「リスクを取って育てるゾーン」にいくら回すかは、前項で計算した「月々の不足額×年数」から逆算して決めます。「老後資金として最低限必要な金額は絶対に減らさない」というルールを守れば、残りは少しリスクを取っても問題ありません。

一度に全額を動かすのではなく、3〜6か月かけて段階的に投資することで、「高値づかみ」のリスクも分散できます。

 

本記事の主な参考文献・出典

※制度や数字は執筆時点の公表情報に基づいており、将来変更される可能性があります。

小林良(こばやしFP事務所)

この記事を書いた人

小林 良 独立系ファイナンシャルプランナー

元地方公務員(埼玉県羽生市・17年間勤務)39歳で独立系FPとして開業。19歳から約20年にわたり日本株を中心に資産運用を実践。資産運用の相談を専門に「売りたい商品のない中立的な立場」で情報発信しています。
保有資格:AFP/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/証券外務員一種
得意分野:新NISA・資産運用・家計設計・公務員マネー

※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・投資を勧めるものではありません。投資は自己判断・自己責任でお願いいたします。

 

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