「投資はこわい」公務員が、最初に知っておきたいこと
「退職金をどうしよう」と悩みながら、結局そのまま普通預金に入れている。そんな方が、公務員OBには非常に多いかもしれません。
公務員には共済・退職金・年金払い退職給付という手厚いセーフティネットがあります。しかしそれゆえに、現役時代に「お金を増やす必要性」を感じにくく、退職して初めて"大金の運用"に直面するという構造があります。
そして多くの方が陥るのが、「よく分からないから全部現金のまま」という選択です。
でも、この「全額現金放置」は安全に見えて、じつはリスクを抱えています。物価が年率2%上昇し続けると、1,000万円の実質的な価値は10年で約820万円相当まで目減りします。現金を「守った」つもりが、インフレに静かに「攻められている」のです。
だからこそ、最初の一手として押さえておきたいのが、「個人向け国債(変動10年)」という商品です。
この記事では、元地方公務員・独立系FPの著者が、変動10年の仕組み・メリット・デメリット・購入方法を、投資初心者の方でも分かるように丁寧に解説します。
- まず「3行」で理解する
- 仕組みを3つのポイントで理解する
- 【シミュレーション】100万円・500万円・1,000万円でいくらもらえるか
- 変動10年のメリット:公務員・公務員OBに刺さる4点
- 変動10年のデメリット。「買ってはいけない」という声の正体
- 定期預金・投資信託との違い「どこに置くか」の地図
- 実際の購入方法——3ステップで完結
- 「守りの土台ができたら次は?」——3記事シリーズの地図
- 変動10年をいくら買えばいいか。「自分ごと」にするには相談が一番早い
まず「3行」で理解する
難しい話に入る前に、3行でイメージをつかんでください。
・市場金利が上がれば、もらえる利息も半年ごとに増えていく。
・元本は国が保証。最低金利0.05%保証。1年後から換金もできる。
「国にお金を貸す」というシンプルな言葉で理解できれば、それで十分です。
「10年満期」と聞くと「10年間は手が出せない」と思いがちですが、1年後からいつでも現金に戻せる仕組みになっています。
この安心感が、退職金の「守り」として使いやすい理由の一つです。
仕組みを3つのポイントで理解する

①「変動」とは。金利が半年ごとに見直される
「変動10年」の「変動」とは、適用される利率が半年ごとに見直されることを指します。金利の計算式は次のとおりです。
適用利率 = 基準金利 × 0.66
基準金利とは、国が10年物の国債を市場で発行するときの金利水準(10年物国債の利回り)です。世の中の長期金利が上がれば、個人向け国債の利率も自動的に上がっていきます。
「難しい計算は覚えなくていい」です。「世の中の金利が上がれば、もらえる利息も増えていく」というだけです。
【最新データ:2026年4月時点】
2026年4月募集分(第193回)の個人向け国債 変動10年の初回適用利率は年率1.55%(税引後1.2351%)です。
2024年前半まで0.5%未満だった金利が、ここ2年で約3倍の水準まで上昇しています。日銀の利上げを受けた市場金利の上昇がそのまま反映された形です。
②「元本保証」。満期まで持てば必ず全額返ってくる
個人向け国債は、日本国政府が発行する債券です。満期(10年後)まで保有すれば、購入金額(額面)がそのまま全額返ってきます。
株や投資信託のように「価格が上下して、売るタイミングによっては損をする」ということがありません。「損をしたくない」という方にとって、最もストレスが小さい仕組みです。
ただし「元本が保証される」のはあくまで「日本国が財政破綻しない」ことが前提です。銀行預金が「預金保険制度(1,000万円まで)」で守られるのに対し、個人向け国債は「国の信用」で守られています。どちらが安全かというより、守られる仕組みが違うとご理解ください。
③「最低金利0.05%保証」と「1年後からの換金」
どれだけ市場金利が下がっても、個人向け国債の利率は0.05%を下回りません。
また、購入から1年以上経過した後は、「中途換金(満期前に現金化すること)」が可能です。その際、「直近2回分の利子(税引前)相当額×0.79685」が差し引かれます。
【中途換金の例】
- 100万円を変動10年で購入し、2年後に換金する場合
- この時点の利率を年1.55%(税引前)と仮定すると、半年分の利息は約7,750円
- 差し引かれる中途換金調整額:7,750円 × 2回分 × 0.79685 ≒ 約12,357円
- つまり、100万円から約12,357円が差し引かれて換金(元本割れにはならない)
元本は必ず戻ります。「利息の一部を返す」だけです。長期保有を前提にすれば、実質的なペナルティはほとんど気になりません。
【シミュレーション】100万円・500万円・1,000万円でいくらもらえるか
2026年4月時点の利率(年1.55%、税引後1.2351%)を基に試算します。
| 購入金額 | 半年ごとの受取利息(税引後・概算) | 年間の受取利息(税引後・概算) |
| 100万円 | 約6,175円 | 約12,351円 |
| 500万円 | 約30,877円 | 約61,755円 |
| 1,000万円 | 約61,755円 | 約123,510円 |
利率は変動するため、あくまで2026年4月時点の試算です。半年ごとに見直しがあります。
元公務員FPからのコメント
「退職金の一部(例:1,000万円)を個人向け国債に置いておくだけで、年間約12万円の利息が自動的に入ってきます。同額を普通預金(年利0.3%程度)に入れたままだと、年間約3万円。その差は明らかです。これは増やす投資ではありません。減らさずに、わずかに育てるための置き場として活用しています。」
財務省の公式サイトにも「受取利子シミュレーション」があり、購入金額を入れると利息の見通しを試算できます。ぜひ活用してみてください。
個人向け国債(変動10年)受取利子シミュレーションのご利用方法 : 財務省
変動10年のメリット:公務員・公務員OBに刺さる4点

メリット①:元本割れしない安心感
「定年後の退職金や生活防衛資金の一部は『リスクを極力抑えたいお金』です。そのような資金の置き場として、預金よりはリスクがあるものの、国の信用を前提とした債券である個人向け国債は選択肢の一つになります。
メリット②:金利上昇局面に自動追随する
2024年以降、日銀が利上げを継続しています。変動10年は半年ごとに金利が見直されるため、市場金利の上昇が自動的に利率に反映されます。固定金利の商品(定期預金など)では取り込めない「金利上昇の恩恵」を享受できる点が、今の局面では特に大きなメリットです。
メリット③:手数料がゼロ
銀行や証券会社で勧められる多くの運用商品には、販売手数料・信託報酬・ラップ報酬などのコストがかかります。個人向け国債は、財務省が個人向けに直接発行する商品のため、販売手数料がかかりません。コスト分が丸ごと自分の手元に残ります。
メリット④:1万円単位・毎月購入できる柔軟性
最低購入金額は1万円から、1万円単位で購入できます。退職金が入ったタイミングで一度に全額を動かすのではなく、「100万円ずつ3か月に分けて購入する」といった分散購入が可能です。タイミングリスクを分散しながら段階的に購入できる点は、初心者にとって非常にありがたい設計です。
変動10年のデメリット。「買ってはいけない」という声の正体
デメリット①:1年間は換金できない
購入後1年間は、いかなる理由があっても中途換金ができません。したがって、「来年使う予定のあるお金」や「緊急時に即座に出せる生活防衛資金」に充てるのは向いていません。
対策:まず生活費の6~24か月分を普通預金に確保してから、残りの余裕資金を変動10年に充てること。
デメリット②:中途換金すると利息の一部が差し引かれる
1年後以降に中途換金する場合、「直近2回分の利子(税引前)相当額×0.79685」が差し引かれます。
ただし元本は必ず保証されます。仮に1年半で換金しても「少し損をして元本に近い金額が戻ってくる」のではなく、「元本は全額戻り、利息の一部だけ調整が入る」というイメージです。
デメリット③:「増やす」目的には向かない
個人向け国債の変動10年は、株式やインデックス投信のような「長期で大きく資産を増やす」商品ではありません。退職金の老後資産形成を本格的に進めたい場合、変動10年だけでは不十分で、NISAなどを使った「育てる資産」の併用が必要です。
「買ってはいけない」という批判の背景について
ネットで「個人向け国債は買ってはいけない」と書かれている記事の多くは、2013〜2023年の長期ゼロ金利・マイナス金利時代に書かれたものです。当時は最低金利の0.05%が事実上の確定利率として続いており、「定期預金とほぼ変わらないのに換金制限がある」という批判には当時なりの根拠がありました。
しかし2026年現在、変動10年は年率1.55%で発行されています。「ゼロ金利時代の批判」がネット上に残り続けているだけで、今の局面で同じ評価を適用するのは正確ではありません。
元公務員FPからのコメント
「増やしたい人には物足りない」という評価は正しいです。しかしそれは商品の設計目的が違うということであり、「守りながら育てる」ゾーンとして正しく使えば、十分な力を発揮する商品です。
定期預金・投資信託との違い「どこに置くか」の地図
退職金の置き場を決めるときに役立つ比較表です。

前の記事で紹介した「3ゾーン配分(守る・安全に育てる・リスクを取って育てる)」に当てはめると、個人向け国債 変動10年は「安全に育てるゾーン」の担当です。

現実的な使い方の目安
・一例として退職金の「守りの資産」として30〜50%程度を変動10年に配置
・残りの一部はNISA(インデックスファンド)などで「育てるゾーン」として分散
・生活費2年分は普通預金で維持
具体的にどれくらいの比率にするかは、退職金の総額・毎月の年金収入・老後の生活費によって異なります。「自分の場合はどうすればいいか」は、後述するFP相談を活用してください。
実際の購入方法——3ステップで完結
どこで買えるか
個人向け国債は、証券会社・銀行・ゆうちょ銀行・JAバンクなど、全国の主要な金融機関で購入できます。ネット証券でもスマートフォンから購入可能です。
購入の3ステップ
ステップ1:口座を開設する
購入したい金融機関(証券会社・銀行など)に、証券口座または国債専用口座を開設します。本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証等)が必要です。ネット証券であればスマートフォンで完結できます。
ステップ2:募集期間中に申し込む
個人向け国債は毎月発行されており、募集期間中(月初から月末程度)にいつでも申し込めます。2026年4月募集分の募集期間は2026年4月6日〜4月30日で、発行日は2026年5月15日です。
金融機関のウェブサイトまたは窓口で、購入したい金額(1万円単位)を指定して注文します。
ステップ3:発行後は半年ごとに利息が自動入金
発行日以降、半年ごとに利息が自動で指定口座に振り込まれます。特別な手続きは不要です。1年後以降に換金したい場合も、購入した金融機関に申し出るだけで手続きできます。
「守りの土台ができたら次は?」——3記事シリーズの地図
この記事はシリーズの第3弾です。ここまで読んでいただいた方に、全体像をまとめます。
📌 記事①「公務員の退職金・年金を3つの箱で整理する」
↓ 制度の全体像(退職手当・厚生年金・年金払い退職給付)を把握する
📌 記事②「公務員OBが退職金で後悔する3つのパターン」
↓ 銀行勧誘・現金放置・総額把握なしという3つのNGを知る
📌 記事③(この記事)「個人向け国債(変動10年)とは?」
↓ 守りの土台をつくる第一歩を踏み出す
📌 次の記事(予告)「新NISAで"育てる資産"をつくる方法【公務員向け】」
↓ 守りができたら、少しリスクを取って育てることも考えてみる
「守りの土台はOK。でも全部変動10年だけでいいのか?」と感じた方は、次の記事(NISA編)も合わせてご覧ください。
変動10年をいくら買えばいいか。「自分ごと」にするには相談が一番早い
変動10年が「守りの起点」として有力な商品であることはお伝えしました。しかし「実際にいくら買えばいいか」は、次の要素によって個人差が大きいです。
・退職金の総額はいくらか
・65歳以降の毎月の年金収入はいくらか
・夫婦の毎月の生活費の見通しはどれくらいか
・住宅ローン残債・介護費用の見込みはあるか
これらを総合的に見た「ライフプラン全体の設計」なしに、「変動10年を500万円買えばOK」とは言えません。
元公務員FPとして、退職金の配分設計を一緒に整理するご相談を承っています。退職金の制度・共済・年金払い退職給付の仕組みを実感として理解している立場から、「売りたい商品のない独立系FP」として中立にお伝えします。
本記事の内容は執筆時点の法令・制度・金利等に基づく一般的な情報提供であり、特定の金融商品の勧誘や投資判断の推奨を目的としたものではありません。実際の運用にあたっては、ご自身の判断と責任において行ってください。
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この記事を書いた人:元地方公務員(埼玉県羽生市・17年間勤務)/現在は独立系ファイナンシャルプランナー(AFP)として活動。退職金・年金・NISA・iDeCoの相談を専門に、「売りたい商品のない中立的な立場」で情報発信。年間100冊以上の金融・投資関連書籍を読み、実務で使える知識をブログとご相談の場でお届けしています。
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