
「子どもが生まれたら学資保険」そんな常識、見直してみませんか。
2025年の消費者物価指数は前年比3.1%上昇し、2022年以降4年連続で2%超のインフレが続いています。学費も例外ではなく、子育て世代の64.3%が「物価・学費の高騰による教育費不足」を不安視しているというデータもあります。
こんな時代に「受取金額が最初から決まっている」学資保険は、果たして最適な選択なのでしょうか。
この記事では、独立系FPである筆者が「学資保険を推奨しない理由」と、「教育費こそNISA系で準備すべき根拠」をお伝えします。
※この記事は、筆者の個人的見解が多く含まれています。ご了承ください。
- 学資保険のメリット・デメリット
- こどもNISA・つみたてNISAが教育費に向いている理由
- FPとして個人的にどちらを選ぶか
- 1. そもそも「学資保険」と「こどもNISA・つみたてNISA」は何が違う?
- 2. 学資保険のメリットをまずはフェアに整理する
- 3. 【FP本音】学資保険の構造的な弱点。インフレ・途中解約・利回り
- 4. 教育費とNISA系投資信託が相性の良い3つの理由
- 5. FPとして個人的にどう設計するか──本音の資産設計案
- まとめ:「元本保証」より「価値を守ること」を優先する時代
- 参考リンク
1. そもそも「学資保険」と「こどもNISA・つみたてNISA」は何が違う?
一言でいえば「保険 vs 投資」
学資保険は、子どもの進学タイミング(主に大学)に合わせて満期金を受け取る「貯蓄型保険」です。受取金額と受取時期が契約時点で確定しており、かつ親(契約者)に万が一のことがあった場合には、その後の保険料が免除される保障が付きます。
一方、こどもNISAは2027年から始まる予定の新制度で、0〜17歳の子ども名義で年60万円・累計600万円まで投資信託を非課税で運用できます。12歳未満は原則引き出しができないため、「教育費専用の積立口座」として機能します。
つみたてNISA(親の新NISA)は、今すぐ使える制度で、長期・積立・分散投資に適した投資信託を年120万円まで非課税で運用できます。

どちらが優れているか、ではありません。「求めているもの」が根本的に異なります。その上で、このインフレ時代にどちらが合理的かを、以下で丁寧に見ていきます。
2. 学資保険のメリットをまずはフェアに整理する
まずは学資保険が支持されてきた理由をきちんと見ておきましょう。
- メリット①:保険料払込免除特約
親(契約者)が死亡・高度障害になった場合、以降の保険料の支払いが免除され、満期保険金はそのまま受け取れます。これは投資では得られない「保障」です。
- メリット②:受取金額・時期が確定している
大学入学時に「最低でも〇〇万円は確保できる」という安心感は、資金計画のしやすさにつながります。
- メリット③:生命保険料控除が使える
支払った保険料の一部が所得税・住民税の控除対象になります(控除枠は限定的)。
- メリット④:自動的に積み立てられる仕組み
保険料が毎月自動引き落としになるため、「貯金が続かない」という方には強制貯蓄の仕組みとして機能します。
筆者コメント:これらは確かに一定の価値です。ただし、以降で述べる「本質的なデメリット」と比べたとき、特にインフレ時代においては、その強みが大きく霞んでしまいます。
3. 【FP本音】学資保険の構造的な弱点。インフレ・途中解約・利回り
学資保険にはメリットもある一方で、インフレ環境や今の時代の変化を踏まえると、見過ごしにくい構造的な弱点が3つあります。
デメリット① 「元本保証」は「名目上の」元本保証にすぎない
これが最も伝えたい点です。
学資保険は「元本が減らない」と言われますが、それはあくまで名目上の金額が保たれるだけ。お金の「価値」は物価によって変わります。
総務省の統計によると、2025年1年間の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年比3.1%上昇し、日銀の物価目標である2%を4年連続で上回りました。
このインフレが今後も続くと仮定した場合、18年後に受け取る700万円の価値はどうなるでしょうか。
【インフレによる"実質的な目減り"のイメージ】
現在の700万円の購買力 ➡ 年2%インフレが18年続くと…
18年後に700万円を受け取っても、実質的な購買力は約490万円程度に相当

「名目上は守られているが、価値は目減りしていた」
これが、インフレ時代における学資保険の最大のリスクです。
さらに、2026年時点の試算では、大学4年間の学費は国公立で約250〜270万円、私立文系で約400万円、私立理系で約550〜600万円程度とされています。
一人暮らしを伴う自宅外通学の場合、学費に生活費を加えると、総額は700〜1,300万円前後に達するケースもあります。
筆者コメント:近年、私立大学の授業料は10年前と比べて5〜10%上昇しており、学費自体のインフレも無視できません。「確定した金額」で準備することの危うさが、ここにあります。
デメリット② 途中解約すると"高確率"で元本割れ
学資保険は長期前提の商品設計のため、途中解約すると多くの場合、解約返戻金が払込保険料の総額を下回ります。
| 年数別 | 解約返戻率の目安(一般的な学資保険の例) |
|---|---|
| 加入3年後 | 返戻率50〜70%(大幅な元本割れ) |
| 加入7年後 | 返戻率80〜90%(元本割れ継続) |
| 加入10年後 | 返戻率90〜100%(ようやく元本に近づく) |
| 満 期 | 返戻率100〜120%前後(ここで初めて黒字) |
教育プランは変わります。中学受験に切り替えた、高校卒業後に留学することになった、専門学校に進路変更した。そういったとき、学資保険は「解約すると大損」という足かせになります。
「入学金が必要になったが、今解約すると10万円以上損をする」という事態は、決して珍しくありません。
デメリット③ 利回りが低く、コストが見えにくい
最近では返戻率120%超の設計例も登場しています。しかし現実には払込方法・満期年齢・特約の有無などで数値が変わり、万人が120%を期待できるわけではありません。
また、0歳から15歳まで保険料を払い、18歳時点で払込総額の120%を受け取るケースを年利に直すと、おおよそ年1%台前半〜中盤程度の利回りになります(※商品設計により異なります)。
年間インフレ率2〜3%が続く中で年利1%ちょっとが達成されたとしても、実質利回りはほぼゼロか、マイナスの可能性が高いでしょう。
さらに販売コスト・運営コスト・保険会社の利益はすべて保険料に含まれています。それが見えにくいだけで、確実に差し引かれているのです。
筆者コメント:学資保険の場合は、途中解約なら約10年間は元本割れです。つまり、10年間は損が確定しているとも言えます。非常に柔軟性が低い設計です。
4. 教育費とNISA系投資信託が相性の良い3つの理由
根拠① インフレとともに「資産価値を育てる」ことができる
株式を組み込んだ投資信託(インデックスファンドなど)は、経済成長や企業収益の拡大を通じて長期的に価値が増大する傾向があります。物価が上がれば企業の売上も増えるため、インフレに連動しやすい資産です。
学資保険が「円の額面」を固定するのに対し、NISA系は「経済全体の成長」に乗ることができます。これこそが、インフレ時代における最大の強みです。
根拠② 非課税・低コスト・完全な透明性
つみたて投資枠で購入できる金融庁が選定した投資信託は、信託報酬が年0.1〜0.2%台のものも多く、コストが明確かつ低水準です。
【学資保険 vs NISAのコスト比較イメージ】
・学資保険: 保険料の中に「保障コスト+運営費+販売費」が内包
→ コストが見えない
・NISAのインデックスファンド: 信託報酬(例):年0.1〜0.2%台
→ コストが明確・低い

さらに、NISAで得た運用益は非課税です。通常、投資信託の売却益や分配金には約20.315%の税金がかかりますが、NISAを通じて運用した分はゼロ。長期になるほど、この差は複利で膨らみます。
根拠③ 必要なときに柔軟に動かせる
親の新NISA(つみたて投資枠)は、必要なときにいつでも売却できます。急に私立高校への編入が決まったなどの、「想定外」に対して、学資保険では「解約損が怖くて動けない」状況が生まれますが、NISAではその縛りがありません。
こどもNISAであれば、12歳まで引き出し制限があるため、逆に「使い込み防止」の仕組みとして活用できます。12歳以降は条件付きで払い出しが可能になるため、高校・大学受験の費用として段階的に対応できます。
筆者コメント:私自身の価値観と家計設計の前提では、教育費準備の第一候補はNISA系の投資信託であり、学資保険を選ぶ必要性はそれほど高くないと考えています。
5. FPとして個人的にどう設計するか──本音の資産設計案
筆者は現在、子ども2人・妻との4人家族で暮らしています。自分の子どもたちの教育費については、次のような考え方で設計しています(あくまで個人の見解です)。
ステップ①:親のつみたてNISA(新NISA)を最優先で活用
まず親のNISAつみたて投資枠(年120万円)を優先しています。教育費と老後資金の土台を同時に育てられ、必要なときに売却もできる柔軟性があるからです。
選ぶファンドは「全世界株式インデックスファンド」など、低コストで分散の効いた商品が原則です。インフレに連動しやすく、長期・積立・分散の三拍子が揃います。
ステップ②:2027年以降はこどもNISAを「教育費専用ポケット」として追加
こどもNISAは12歳まで引き出せない制約が「教育費のための強制積立」として機能します。親のNISAとは別に、子ども1人あたり年60万円・累計600万円の非課税枠を持てるため、世帯全体の非課税投資枠を大きく拡大できます。
ステップ③:学資保険は「どうしても必要な人」だけのサブ選択肢
筆者個人は学資保険を積極的には推奨しません。ただ、以下の条件を複数満たす方には一定の役割があると認めています。
- 投資の値動きに強いストレスを感じ、酷く不安になる方
- 「とにかく1円も元本を減らしたくない」という強い志向がある方
- どうしても自分では積立が続かず、「強制的な仕組み」が必要な方
それ以外の方にとって、学資保険は「低金利環境で、定額で教育資金を積み立てることを主眼に設計されてきた商品であり、年2~3%超のインフレが続く現代においては、教育資金の準備手段として合理的とは言いがたいというのが、筆者の立場です。
1円も元本を減らしたくない人には、個人向け国債(変動10年)がオススメ
「どうしても元本割れだけは絶対イヤ」という方には、個人向け国債(変動10年)の方が合理的です。個人向け国債変動10年は、国が元本と利払いを保証する債券で、市場金利に応じて半年ごとに金利が見直されるのが特徴です。
こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
まとめ:「元本保証」より「価値を守ること」を優先する時代
学資保険は、かつての時代には合理的な選択でした。しかし、年2%を超えるインフレが続くいま、「名目金額を守る」ことよりも「お金の価値を守る」ことの方が重要になっています。
- 私立大学の学費は10年で5〜10%上昇している
- 消費者物価指数は2022年以降4年連続で2%超の上昇
これらを踏まえると、「確定利回りで名目金額を守る学資保険」よりも、「経済成長に乗りながら価値を育てるNISA系の投資信託」が、インフレ時代の教育費準備に合理的なアプローチだと筆者は考えます。
もちろん、「元本割れが本当に怖い」「投資のストレスに耐えられない」という方のすべてを否定するつもりはありません。大切なのは、選択肢の実態を正確に理解した上で選ぶこと。その一助になれば幸いです。
※本記事は筆者の個人的見解に基づくものです。投資信託は元本が保証されておらず、価格変動リスクがあります。商品の選択・購入にあたっては、各自の状況に合わせてご判断ください。
参考リンク
・統計局ホームページ/消費者物価指数(CPI) 全国(最新の月次結果の概要)
・大学の学費はいくら?全国平均400万円【2026年最新・47都道府県比較】 | 暮らしコストラボ

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