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ソフトバンクGハイブリッド社債【第9回】は買いか?第8回との違いをFP視点で比較解説

この記事のポイント
2026年6月、ソフトバンクグループが再び個人向けハイブリッド社債(劣後特約付)の募集を開始しました。4月の第8回からわずか2か月後の連続発行です。利率は当初5年間 固定5.12%で決定しました。魅力的に見えますが、この債券には初心者が見落としがちな複数のリスクが潜んでいます。FP視点で、仕組みから注意点まで確認していきましょう。


今、何が起きているのか?わずか2か月で再び社債発行。

2026年4月、ソフトバンクグループ(SBG)は個人向けのハイブリッド社債(劣後特約付)を4,180億円・利率4.97%で発行しました。そして同年6月、今度は2,600億円・利率5.12%でふたたび個人向けの同タイプ社債を発行すると発表しました。

2か月で合計約6,780億円以上を、主に個人投資家から調達しようとしているこの状況に、X上では、『SBG異常事態』『機関市場から閉め出された後の逃げ場ではないか』といった、辛辣なコメントも見られます。

SBG側の公式説明では、今回の第9回債の資金使途は「2027年7月に初回任意償還日を迎える米ドル建ハイブリッド社債の借換え資金の一部に充当する予定」とされています。つまりは「古い借金を、新しい借金で返す(借換え)」という話です。

国内ハイブリッド社債(利払繰延条項付)の発行に関するお知らせ | ソフトバンクグループ株式会社

そもそも「劣後債(ハイブリッド社債)」って何?

 普通の社債との違いをわかりやすく

「社債」とは、企業が投資家からお金を借りるために発行する債券のこと。国債の企業版です。銀行に預けるより高い利率が期待でき、満期になれば元本が返ってくる仕組みです。

今回の「ハイブリッド社債(劣後特約付)」は、それより少し特殊な商品です。

・普通社債(一般債)は、会社が破綻した場合、まず普通社債の保有者にお金が返ってきます。

・劣後債は、同じ借金でも「もし会社が倒れたとき、普通社債の人が全員返済を受けた後でないと、返済してもらえない」という約束がついた債券です。

劣後債の返済優先順位

劣後債の返済優先順位

つまり、万一のときは「後回し」にされるリスクがある分、その補償として高い利率が設定されているわけです。

会社から見ると:「借金」と「株(自己資本)」の中間のように扱える資金調達手段。格付機関から"50%だけ自己資本として認められる"ため、財務の見栄えをよくできる

投資家から見ると:普通の社債より利率が高い分、「会社が倒産したときの返済順位が後ろ」「利息を後回しにされる可能性がある」など、リスクが高い債券

前回記事で、「劣後債とは」「コールスキップ」「LTV問題」について詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

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第9回の主な条件をチェック

基本スペック

項目 内容
発行総額 2,600億円
当初利率 年5.12%(税引前)
利率確定日 2026年6月5日(木)
申込期間 2026年6月8日(月)
〜6月18日(木)
発行日・満期 2026年6月19日(金)/
2061年6月19日(35年後)
初回コール日 2031年6月19日(発行5年後)
格付 BBB+(JCR)
取扱証券 SBI・野村・SMBC日興 他
最低購入単位 100万円

第8回との主な比較

比較項目 第8回
(2026年4月)
第9回
(2026年6月)
発行総額 4,180億円 2,600億円
利率(当初5年・仮条件) 4.97% 5.12%
満期 2061年4月22日 2061年6月19日
初回コール日 2031年4月22日 2031年6月19日
資金使途 国内劣後債の借換え 米ドル建て劣後債の借換え

 

注目ポイント:今回は資金使途が「円建て社債の借換え」から「ドル建て社債の借換え」に変わっています。これは、「海外の機関投資家向けに発行していたドル建て劣後債を、国内の個人向け円建て債で返す」という構造です。

 

この商品の4つの重要な特徴

① 期間35年の超長期債

満期は2061年。35年後まで元本が戻らない可能性があります。過去の国内劣後債では、発行体が初回のコールタイミングで償還を行うのが慣行でしたが、それはあくまで慣行であって約束ではありません。償還は発行者(SBG)の都合で決まります

② 利払い繰延条項(利息の後回しが可能)

SBGが「今期は利息を払わず後回しにします」と決めることができる条項がついています。実際にこれが発動されると、その分の利息はいずれ受け取れる可能性はありますが、資金計画に狂いが生じます。

劣後債:利払い繰延条項イメージ図

③ 劣後特約(倒産時の返済順位が低い)

SBGが破綻・法的整理に入った場合、普通の社債や銀行借入より後から弁済されます。最悪の場合、元本・利息がゼロになる可能性もあります。後回しなので利率が高いのです。

④ 5年以降は変動利率

初回コール日(5年後)以降は毎年、「1年国債利回り+スプレッド+一定の上乗せ幅」で利率が変動します。当初利率より上がる設計になっていますが、金利環境次第では思ったほど増えないケースもあります。

こちらの記事で詳しく解説しています。

ソフトバンクグループ個人向け劣後債は買いか?「実質5年債」とコールスキップを債券初心者向けに解説 - 毎日をちょい上質に|旅×食×ウェルネス

 

なぜ「個人向け劣後債の連発」が問題視されているのか?

本来、大企業はどこから借りる?

保険会社・大手銀行・海外の機関投資家。これが大企業が通常頼る「機関投資家」と呼ばれる存在です。彼らは専門知識を持ち、大きな金額を低コストで提供できます。

今回のSBGのように連続で「個人向け」に高利率の劣後債を売るのは、『機関投資家からは同じ条件では資金を集めにくくなっているサインではないか』と見る方もいます(あくまで一部の見方です)

報じられている「背景」

ブルームバーグは、SBGが保有するOpenAI株を担保に借りているローン(マージンローン)について、貸し手側が融資額の縮小を検討していると報じています。これは金融機関がSBGへの与信(貸し出し可能額)を絞り始めているサインとも解釈できます。

加えて、格付け機関の動向も気になるところです。

- S&Pグローバル・レーティングは2026年3月、SBGの格付け見通しを「安定的」→「ネガティブ」に引き下げ
- 今回の第9回社債のJCR格付けはBBB+(投資適格の下限近辺)
- SBGのCDS(倒産保険の保険料に相当)は日本企業の中でも高水準と報じられている

「過去最高益5兆円」と「資金繰り」は別の話

SBGの直近決算では「過去最高益5兆円」と報じられました。しかし、この利益の大部分はArm株式の評価益(含み益)が中心です。

- 含み益:保有株が値上がりしても、売らない限り現金にはならない
- 一方で、借金の借換えや担保ローンの縮小には、実際の現金が必要

「利益が出ているから大丈夫」と単純に考えるのは危険で、キャッシュフローと資金繰りの実態を合わせて見ることが重要です。

⚠️重要な視点:これらの懸念はブルームバーグや一部アナリストによる見方であり、SBGとしての公式見解とは異なります。最終的な判断は、各自が情報をもとに自分で下してください。

 

投資初心者が押さえておきたい3つのポイント

ポイント1:高利率には必ず理由がある

今回の利率5.12%は、5年国債の利回り(約1〜2%台)と比べると2倍以上の水準です。国債は「国が破綻しない限り元本が返ってくる」前提の商品。SBGは民間企業であり、投資先もハイリスクなAI・テック分野が中心です。

「高い利率=おトク」ではなく、「高い利率=それだけリスクを投資家が引き受けている」と考えましょう。

ポイント2:劣後債は「株に近い債券」

- 破綻時の返済順位が低い(劣後特約)
- 利息が後回しにされる可能性がある(利払繰延条項)
- 満期35年で途中償還は会社の都合

この特徴から、劣後債は普通の社債より株に近い性格を持ちます。「債券=安全」と思って買うと、リスクを取りすぎてしまう可能性があります。

SBI証券も商品説明の中で、「利回り・安定重視」の方や、主たる資金の性格が「余裕資金」以外の方の投資はおすすめしておりません。とはっきり明記されています。

ポイント3:「大企業=安全」という思い込みを手放す

SBGは世界的な大企業ですが、過去にも大規模な損失(WeWork等)を出してきた歴史があります。「大企業だから倒産しない」という保証はなく、特に劣後債は破綻時に真っ先に影響を受けます。

 

この債券、初心者にとって「アリ」か「ナシ」か?

メリット(ポジティブな側面)

- 当初5年の利率が高い(5.12%)
- 過去の第1〜第4回は、初回コール日に全額償還された実績がある
- 大手・ネット証券で購入でき、100万円単位と個人でも参加しやすい

デメリット・リスク(注意すべき側面)

- 破綻時は返済順位が低く、最悪ゼロになる可能性がある
- 利払いを会社の判断で後ろ倒しにされる可能性がある
- 満期35年・途中償還は会社の都合(投資家に選択権なし)
- 格付見通しの引き下げ、CDS高水準など、信用リスクが意識されている
- 「機関市場での調達が難しくなっているのでは」という懸念

初心者ならどう考えるか?

資金の性格 判断の目安
老後資金・教育資金など「絶対に大きく減らせないお金」 避けた方が無難。元本割れリスクがある商品は向いていない
当面使わない余裕資金で、SBGのリスクを承知の上で 少額なら検討の余地あり。ポートフォリオの一部として上限を決める
「安全な債券投資」のつもりで買いたい 不向き。個人向け国債や高格付けの普通社債の方が適している

リスクを承知の上で購入するなら、ありだと思います。安全運用のつもりで考えているなら、見送るべきです。

「高利率の社債」を見たときの初心者チェックリスト

今後も同様の高利率社債を見かけたとき、購入前にこの視点で確認する習慣をつけると安心です。

1. 格付けを確認する → BBB+(投資適格の下限近辺)以下は相応のリスクを意識
2. 劣後特約・利払繰延条項がないか確認する → あれば「普通の社債より株に近い」と理解する
3. 発行体の財務をチェックする → 「利益=現金」ではない。キャッシュフローも見る
4. なぜ個人向けなのかを考える → 機関投資家に売れない条件ではないか?
5. 自分のお金の性格を先に決める → 「守るお金」か「攻めに使えるお金」かを整理してから商品を選ぶ

まずは国債・高格付けの普通社債・バランス型の投資信託(インデックスファンドなど)で運用の土台を作り、こうした劣後債は「よく理解できた余裕資金の範囲内」にとどめる。これが初心者にとってリスクを取りすぎない、現実的な距離感です。

 

まとめ:利率が高い理由を理解しよう

SBG第9回劣後債は、4月第8回に続く「個人向け高利回り債」の連発であり、利率は魅力的な一方で、期間35年・利払い繰延・劣後特約など、初心者が見落としやすいリスクを多く含む商品です。

「おいしい高利回り商品」ではなく、「SBGの財務やビジネスモデルまで含めて理解したうえで、ポートフォリオの一部として慎重に検討すべき商品」と捉えるのが妥当だと考えています。

よく分からないまま話題性や利回りだけで飛びつくのではなく、ご自身のリスク許容度と資金計画に照らして、「本当に自分に必要なリスクかどうか」を考えてみてください。

 

補足:安全運用の選択肢なら「個人向け国債」

債券で利息を受け取りながら資産を守りたい」というニーズに対しては、「個人向け国債」がオススメです。

個人向け国債は、日本政府が個人向けに発行している国債で、元本や利払いについては国が責任を負う仕組みになっています。

種類は「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3つがあり、利率は決して高くはありませんが、その分、元本割れしない安全性があります。

「5年後には必ず教育資金として使いたい」「老後資金の一部は減らしたくない」といったお金については、SBG劣後債のようなリスク性の高い商品ではなく、個人向け国債のような安全サイドの商品をオススメします。

本記事の主な参考文献・出典

※制度や数字は執筆時点の公表情報に基づいており、将来変更される可能性があります。

※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・投資を勧めるものではありません。投資は自己判断・自己責任でお願いいたします。

小林良(こばやしFP事務所)

この記事を書いた人

小林 良 独立系ファイナンシャルプランナー

元地方公務員(埼玉県羽生市・17年間勤務)39歳で独立系FPとして開業。19歳から約20年にわたり日本株を中心に資産運用を実践。資産運用の相談を専門に「売りたい商品のない中立的な立場」で情報発信しています。
保有資格:AFP/2級ファイナンシャル・プランニング技能士/証券外務員一種
得意分野:新NISA・資産運用・家計設計・公務員マネー

※本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入・投資を勧めるものではありません。投資は自己判断・自己責任でお願いいたします。

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